全国各地では花粉症の流行時期となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
家にいる時と食事以外はほぼマスク生活をしておりますオルガニクスアンバサダーの諏訪です。
たくさんのアクセスをいただいておりますスポーツ整形外科医シリーズとして最近話題になっている『鉄剤注射』について書いていきたいと思います。
ニュースや新聞などのメディアにも大きく取り上げられているのでご存知の方も多いかと思いますが、これからの日本スポーツ界の将来を担うジュニア世代である中高生での乱用が問題となっています。
全国中学駅伝や全国高校駅伝に出場するような強豪校でも多くの選手がが鉄剤注射をしているというのが実情のようです。
これは貧血が改善するまでに要する時間が短く効率的で簡潔であるという利点のみをクローズアップした安易な使用が多いことと、ドーピングのような明確な規定や罰則がないということが関係していると考えます。
ジュニアからシニア、トップアスリートまで多数の貧血を診断・治療してきたスポーツ整形外科医として、また自身の治療経験に最新の知見を組み込んで、私がオススメする貧血対処法をお教えします。
早期の適切な診断
何となく疲れやすい、パフォーマンスが上がらない、やる気が起きないなどの漠然とした症状は貧血の可能性があります。
夏場のトレーニングで発汗が多かったり(汗と一緒に鉄分が失われる)、長距離選手で硬いロードを走ることが多かったり(足底衝撃で赤血球が壊れて溶血する)、女子選手での摂食障害による鉄分不足や月経出血にも注意が必要です。
“少しでも思い当たったら一度血液検査をしてみる”という考えが大切です!!
その際に治療の指標となる貯蔵鉄の指標であるフェリチンという値も一緒にチェックすることをおすすめします。
貧血でヘモグロビン値が下がる前に低下してきますので、潜在性の貧血を見つけることもできます。
治療の一番の基本は食事とトレーニング再考
朝昼晩三食、なるべく鉄分の多く含まれる食材と吸収を助けるビタミンCを多く摂ることを心がけましょう。
トレーニングの質や量を落としたり、走路を工夫したり、クッションのあるシューズを使用するのも良いでしょう。
それでも改善がなければ、まずは鉄剤内服
私もスポーツ貧血で内服していましたが、もちろん美味しくはなく、慣れるまでは胃腸障害が出たりもします。
ただ2〜3週間すると慣れてきますので過度な心配は要りません。
ここで大切なことがあります。
血液検査でヘモグロビン値が正常化したら内服終了ではなく、前出した貯蔵鉄の指標であるフェリチンが正常化するまでおよそ3ヶ月は継続するようにしましょう!
最終手段としての注射
重度の貧血であり治療に急を要する場合やどうしても内服できない場合、注射しか使用できない場合に限ってのみ使用を検討しましょう。
鉄剤注射はなぜ良くないの??
注射で体内に入った多量の鉄で処理しきれなかった分は肝臓や心臓などの臓器や神経に沈着し、様々な機能障害を起こすことがあります。
ジュニア期の安易な使用が実業団に入ってからのパフォーマンスの低下を起こすことが問題視されています。
金の卵を安全に大切に育てていくためにもなるべく多くの方々に貧血のことを知ってもらいたいです。
選手はもちろんですが、指導者や保護者の方々も適切な知識を持って貧血に対応していただきたいというのが私の願いです。
【スポーツ庁ホームページ】
・不適切な鉄剤の静脈内注射の防止について
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/hakusho/nc/1412652.htm