オルガニクスアンバサダーの中尾晴実です。
9月にスペインマラガにて世界マスターズ選手権が開催されました。今回はレースについてご報告、レポートいたします。
当初は300mハードル、80mハードルにエントリーしていましたが、300mハードルは棄権し仲間の100mのサポート、応援に徹しました。
せっかくここまできて・・・と心の迷いはありましたが、
「何が一番大切で、何を一番目標にしてきて、何に一番になりたい覚悟はあるのか」という言葉で80mハードル1本に絞って挑む決心がつきました。
やはり中途半端な練習しかしていない状況で自分が決勝に残り颯爽と走っているイメージが湧かなかった。
また長期フライトの時差ボケにより、軽く脱水症状になっていたので、回復期間にしようと。気分的にも焦らず練習も徐々にあげることができました。
何より、裏方に徹して仲間のウォーミングアップのやり方、試合に向けての心の持っていきかた、そして一緒に喜びを分かち合えたこと。試合にでることが全てではない学びの日々でした。
そんな中で、私はレース3日前、ハードルドリルにおいて着地の際に腰をずらしてしまい、その場で動けなくなくという最悪の事態になってしまいました。
調子は日を追うごとに上がっていきました。質もあがった練習の中、紙一重のところで怪我。
一緒に練習していた仲間にも申し訳なくて・・・・
普通に振る舞いたいけど体は動かず。歩行も困難。急性腰痛症。
所謂、ぎっくり腰になってしまいました。
そんな状況でも自分の心の中では
「大丈夫、あと3日しかないのではなく、まだ3日ある」
伊藤超短波さんからもお借りしていた超音波もあるし、スキンストレッチ、フォームローラーもある!怪我を予言していたのではないかと思われるくらい沢山の器具を持参してきたのでひたすら治療に専念しました。
ただ回復には程遠い状況。でも心だけは諦めないと誓いました。
何より仲間が励ましてくれて、できないことをフォローしてくれました。
そして予選当日。私の前に救世主があらわれました。
M45の世界記録を狙っているリレーメンバーに帯同するトレーナーの小波津先生が、
前日の夜中に到着したにも関わらず、私のために朝早くから治療にきてくれたのです。
走れる気もしない、ハードルをとぶなんてありえない話。
ハードルをとびおえて、腰にくる衝撃を考えるだけで、ゾッとする笑。
ポケットの中には湿布とロキソニンの痛み止めを忍ばせ先生との初めてのご挨拶は
「朝早くから申し訳ございません。中尾と申します。この度はありがとうございます。」という会話からスタート。
先生は全く痛みのある腰は一切触らず、ソフトに関節などを動かしてくれて終了。
先生は「痛み止めとか飲まなくても大丈夫でしょうか?」との問いに
「予選、準決勝、決勝があるから徐々にあげていきましょうね。痛みは徐々に消えていくはずです。何せ私の施術が初めてだし、3日間痛かったと脳は覚えているので。最初はリラックスして走り始めましょう。」と爽やかに答えてくれます。
ん?先生、今私に何をいったのだろうか??笑。
正直、最初は半信半疑でしたが、昨日の痛みとは明らかに変化しています。
でも先生は患部(腰)を一切触っていない!!!!笑
先生の手品を観ているような、これは夢なのだろうか?でも夢なら冷めないで!走りたい、走れるようになりたい。そんな気持ちでした。
アップをスタートすると若干痛みはあったもののジョッグはできる、ドリルもできる、加速もできる!?クラウチングスタートもできた!!!体が温まると痛みも消えていきます。
まったく寝返りすらできなかった昨日の自分がどんどんできることがひとつ、
またひとつと増えていきました。それもたった2時間弱で。
ただどうしてもトラウマで試合前のアップではハードル練習はできません。
予選スタート前の本番前練習で1台目だけトライ。とんでみました。
その瞬間「あ、大丈夫だ。」と少し自信がもてました。
1日目
予選80mハードル13秒53
組2着。予選通過。
とにかくホッとしました。
この状態でこのタイムなら、きっと明日はもっと
がんばれそうだ・・と。
先生に心からのお礼をいい帰路につきました。
仲間も安堵の表情。本当に心配かけてごめんなさい。
2日目
W50カテゴリーのみ人数が多く急遽朝一番9時で準決勝レース。
そして実際確認をしたらまた時間変更。
海外ではよくあることと思い、ここで動じず。
2日目も小波津先生がリレーは明日が試合だからと、ずっと帯同してくれました。
昨日と違うことは
「次はどこの動きがスムーズにできないか」という私のリクエストの細部にまでケアをしてくれました。
ひとつひとつの動きを丁寧に。
遠くでは先生が見守ってくれました。
そして試合前。
腰の痛みはほぼなし。
むしろ動きにキレがでてきた感覚があります。
特に初速がとてつもなく加速できる。
自分の体だけど、違う何かに操作されている感覚にまでなっている自分がいました。
今思えばあれが「ゾーン」というのかもしれません。
沢山の人が支えてくれている。
鼻の奥がツーンと泣きそうな、嬉しくて、ワクワクして、
ありがとうという感謝の気持ちでスタートラインに立ちました。
本当に負ける気がしなかった。
誰に?かというと
「昨日までの自分に」
試合結果
準決勝
2日目80mハードル13秒19
組3着。プラスで拾われる
決勝
80mハードル13秒16(-0.3)第3位銅メダル。
シーズンセカンドベスト
奇跡がおきたとしかいいようがない経験をしました。
先生にお会いしてなかったらこのタイムでは絶対に走れなかったでしょう。
小波津先生、一緒にいてくれた仲間、そして日本で応援してくれている家族、友達。
沢山の人のおかげでギフトをいただくことができました。
最後に
決勝のゴール瞬間のラストシーンの1枚
本当に勝ちたいという本気の顔は自分の知らない顔でした。
かっこ悪い、ぶざまな恰好の自分がそこにありました。
ただ思うことは、自分で自分を信じなければ奇跡はおこすことができないし、
心が強くなれなきゃ、人にも優しくできない。
沢山自分を信じてゴールに向かった自分がそこにいました。
スペインマラガ世界マスターズ2週間。
私の人生観が変わるくらいの沢山の学びと経験値を増やしてくれたことに
沢山のありがとうと愛をこめて。
長い文章お読みいただきありがとうございました。
オルガニクス公式インスタグラムでも公開中ですので、ぜひご覧ください。
@organix_jp