ツール・ド・フランスと言えば、マイヨ・ジョーヌ。黄色ジャージのことです。
ツール・ド・フランスとマイヨ・ジョーヌはセットで覚えている人も多いんじゃないでしょうか。
このマイヨ・ジョーヌは、全21ステージを戦う中で前日までの各ステージの合計タイムが最も短い選手が翌日のステージで着ます。
最終第21ステージ前の第20ステージ終了時点でトップに立ち、翌日のパリにマイヨジョーヌを着て戻って来た選手が「個人総合優勝」となります。ツールで最も栄誉とされています。
ちなみに最終第21ステージは必ず凱旋門のあるパリ・シャンゼルゼで行われます。いわば凱旋レースとなり原則的には総合順位の争いはしません。
この栄誉のために世界のトップ選手約180人が3週間で約3500キロを走って争うのです。
※2018年は22チーム176人が参加し走行距離3,329キロ
でも、栄誉を讃えられるのはマイヨ・ジョーヌだけではありません。それ以外にも3種類のジャージがあります。
マイヨ・ヴェール(緑色のジャージ)
マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(白地に赤玉ジャージ)
マイヨ・ブラン(白いジャージ)
この3つのジャージの意味を知るとツールをより多層的に楽しむことができるようになります。ただし、それを説明する前に絶対に知ってないといけない大変重要な基礎知識があります。
それはツールドフランスは、2つの全く異なる性質を持った「平坦ステージ」と「山岳ステージ」で構成されていることです。
まずは2018年ツールドフランスの全21ステージを見てみましょう。
(画像はウィキペディアより引用)
平坦ステージが9日間、山岳・中級山岳ステージが10日間、タイムトライアルが2日間あることがわかります。
実際にそれぞれがどんなコースなのか2018年ツールを例に見てみると、
平坦ステージ(第2ステージ)
山岳ステージ(第12ステージ)
(画像はツールドフランス公式サイトより引用)
見ての通り。全く違います。
とりあえず素人がビビっちゃうのは1日200km近く走るんだってことだと思うんですが、山岳ステージはそれに加えて2000m級の峠を3つも超えちゃったりするのです。
上記2018年第12山岳ステージの最後にある峠は、毎回激戦必至の「ラルプ・デュエズ(L’Alpe-d’Huez)」と呼ばれる、ツールでは大変有名な峠です。↓
この平坦ステージと山岳ステージの違いがそのまま活躍する選手のタイプの違いを生み出します。
平坦ステージでは「スプリンター」と呼ばれるいわゆる瞬発系の能力に秀でた選手が活躍するのに対して、山岳ステージでは持久系の能力に秀でた「クライマー」と呼ばれる選手たちが活躍するのです。
そして、その平坦ステージで活躍したトップスプリンターに与えられるのが緑のジャージこと「マイヨ・ヴェール」、
山岳ステージで活躍したトップクライマーに与えられるのが赤玉ジャージこと「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(←日本では読みにくいので通常は「山岳賞」と呼ばれます)」と言うわけです。
しかも面白いことに、この2枚のジャージはマイヨ・ジョーヌとは全く別のルールで順位が決まります。
マイヨ・ジョーヌが「総合タイム」で争われているのに対して、
マイヨ・ヴェールとマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュともに「ポイント制」で争われるのです。
ツールでは各ステージごとにその特性に適した形で「スプリント・ポイント」と「山岳ポイント」が設定されています。
スプリント・ポイントは中間地点とゴール地点に設定されていて平坦ステージほどポイントが高く設定されています。山岳ポイントはステージ中にある全ての峠がカテゴリー超級〜4級まで5等級に分けられそれぞれに応じた山岳ポイントが設定されています。(峠がゴール地点だとポイント2倍になるなどいろいろ細かいルールもありますが詳細はウィキペディア参照ください)
つまりスプリント・ポイントと山岳ポイントは別々のポイントとして個人に加算され、それぞれのトップがそれぞれのジャージを着ることになるわけです。
総合タイム争いとポイント制との最も端的な違いは何か?というとそれはアナログとデジタルの違いに似ています。
総合タイム争いは日々のレースにおいてライバルとのタイム差のみが最も重要な成果となります。結果的に最優先事項が順位ではなくなりライバルと時間差を常に確認しながら状況に応じた動きの中でゴールします。
しかしポイント制は順位によってポイントが明確に決まるため、レース内で必ず上位に入らなければポイントは稼げません。その結果伸るか反るかの一発勝負が毎ステージごとに繰り広げられます。
平坦ステージの場合はゴール前でのスプリント勝負による熾烈な順位争い、山岳ステージではアタック合戦の応酬による耐久サバイバルレースが行われるのです。
それが、マイヨ・ヴェーヌおよびマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュの争いです。
今まで両方トップでパリに戻ってきた選手は一人もいません。それほど求められている能力は違うのです。っていうか、そうなるようにルールを作っていると言った方がいいかも知れませんが。
あ、そういえば最後に残ったマイヨ・ブランですが、25歳以下の総合タイムトップの選手が着るジャージです。別名ヤングライダー賞とも呼ばれていて、マイヨ・ジョーヌの若手登竜門的意味合いがあります。
と、ここまで読んでくださった方は思うでしょう?
で、結局どんな選手がマイヨ・ジョーヌを着てパリに戻ってくるの?
スプリンタータイプなの?クライマータイプなの?
はい、最終的には「オールラウンダー」と呼ばれる選手がマイヨ・ジョーヌを着て戻って着ます。
オールラウンダーとはその名の通り平坦ステージも山岳ステージも卒なくこなす選手です。
ツールでは基本的にはこのオールラウンダーと呼ばれる選手たちが各チームのエースとなりマイヨ・ジョーヌ争いをします。
エースが総合タイム争いで鎬を削っているのと同時に、一芸に秀でたスプリンターやクライマーたちがポイント獲得のための順位争いをステージごとに繰り広げている。
それが見る側に複数の視点を与え、ツールの面白さに厚みを加えているのです。
と、ここまで語ってようやくツールの面白さの50%ほどを伝えることができたでしょうか。
でもやはりなんと言ってもツール最大の魅力は、マイヨ・ジョーヌ争いです。
最後は、最終的にマイヨ・ジョーヌを着ることになるオールラウンダーがいかにしてツールドフランスを戦っているかを紹介したいと思います。
前編でもお話した通り、ルール、チーム戦術、個人の能力、コースコンディションと気象状況、そして運が複雑に絡み合い、まさに筋書きのないドラマが展開され、観るものを3週間クギ付けにしてしまうのです。
(続く)
前編 素人が素人にツールドフランスの面白さを全力で解説する① 〜ひと言で説明すると〜
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